イクボスは漢方薬。北九州市役所にみる男性育休のブレイクスルー例

酷暑の中、イクボス研修で北九州市役所へ行ってきました。北九州市のイクボスの取組は早くからで、平成26年12月26日に北橋市長が全国で2番目にイクボス宣言してからです。

北橋市長(左から2番目)とイクボス宣言

翌年から年間10回の課長級向けイクボス研修を繰り返してきました。当初から所管部署の担当者や上司の皆さんには熱意があり、イクボスの理念をよく理解して、研修にとどまらず啓発事業を次々に展開してくれたのです。 ※北九州市のイクボス推進の多様な取組はこちら

平成27年イクボス研修にて受講者全員(615名)の課長職がイクボス宣言

研修の目的も当初は「女性活躍」がメインテーマ、「男性育休」は平成26年時点で5.0%と世間並みだった。その後「働き方改革」の法律が出来て、男性の働き方・休み方を含めた変化の中で、「男性育休をもっと推進しましょう!」と研修では繰り返してきました。

ようやくその成果が出たようで、今年の研修前に調べてもらったら、H26年度から男性の育休取得率が急伸!なんと令和2年度は42.7%と、イクボス始めて6年間で8倍以上になってました!役所の目標は令和5年度までで30%でしたから前倒しで達成。しかも平均取得日数が29.9日と、中味(質)も上がっています!

まだ取得日数が3日~2週間未満が48%ですが、2週間以上1か月未満が26.4%、1か月以上(平均82日)も26.4%いて、全平均で29.9日でした。全国の地方公務員の取得率が8.0%(令和1年度)ですから、行政の中ではハイレベルなのは間違いありません。

「パパ職員とイクボスとの面談の効果の表れですね」と担当者は言っていました。

これまで毎年の研修でも繰り返し「イクボスは部下職員とのコミュニケーションを深め、信頼関係を築く中で、出産など家庭情況などライフ情報の把握に努めるべし」と言ってきたのが、じわじわと浸透し、実のある面談が増えたのでしょう。

その男性育休の進展を踏まえた今回のイクボス研修。その成果を褒めつつ、来年度から施行の「男性産休」についてレクチャーし、「時間かかるかもしれないけど、男性の産後4週間の取得を当たり前の役所にしましょう」と、伝えました。

そう、イクボスは漢方薬なのです。ワクチンや特効薬のように1~2回打てば効くわけではなく、エブリデイ、部下との会話を経てピープルマネジメントが分かってくるはず。また働き方も毎日改善や棚卸しを繰り返して、職員の業務環境の整備に努めるのがイクボス。スタッフの多くが「これ要らないよな~」と思っている無駄な会議や資料作りなど「時間ばかり取られる謎の間接業務」に対して「やめる勇気」を持つこともイクボスの大事な心構えなのです(部下からは「この会議やめましょう」とは言えないから」。

北九州市はFJの「第2回イクボス充実度アンケート調査」の結果、前回(平成29年度)に引き続き、市区町村ランキングで1位(2連覇)を取っています。

【ニュースリリース】「第二回イクボス充実度アンケート調査」結果発表

北九州市には有力な民間企業もある。今後も北九州市役所は率先垂範で、男性育休だけでなく介護や病気等を抱えて働く人の誰しもが、働きやすい・働き甲斐のある職場の風土整備を進めてもらいたいものです。

◇イクボス研修のチャプターは以下です。ご参考までに。

  • イクボスの定義・理念・主旨
  • イクボスが今なぜ必要なのか?
  • 働き方や少子化など日本社会(自治体)が抱える課題と展望
  • 人生100年。働き方改革は一人ひとりの「生き方改革」に繋がる
  • 多様性を受け容れるマネジメントとは?
  • 制度より風土を変えよう!イクボスは空気清浄機
  • 改正育休法について、男性産休新設の理由
  • 男性育休は社会を変えるボウリングの一番ピン
  • イクボスの3大心得
  • 優しいだけの「得ボス」になってはいけない
  • withコロナ時代イクボスによる生産性の高め方
  • 時間泥棒(無駄な間接業務)を退治しよう
  • イクボスはまず何をすべきか~それぞれのアクション宣言
  • 「中間管理職」から「中心管理職」へ
  • イクボスは漢方薬。今日から地道に始めよう