ホンとの出会い

ホンとの出会い

読書の秋です。私の本との出会いは小5くらいでしょうか。それまではマンガか児童書しか読んでなかった私が、5つ上の兄が読んでいたSF小説にハマったのです。平井和正、小松左京、星 新一、筒井 康隆…。兄の本棚から毎日のように「これ、面白そう」と読み漁っていました。

本との出会いが、音楽や映画にも世界を広げてくれました。中学生の頃も親の仲が悪くて居心地が悪かった家、行きたくもない学校に通う電車の中で、自分の好きな本に没頭したり、映画館にいるときだけ「自由」を感じていました。

そんな私が営業マンを辞めて「本屋」になったのが30歳の時、都内にある小さな書店の店長になりました。現場で勉強し6年後、『ツッカケで行ける、使える本屋』をコンセプトに、雑誌を餌にして岩波文庫などの硬派な書籍を売る往来堂書店という面白い店が出来ました。その後、2000年にインターネット書店ができてからはオンライン書店の店長に転職。売る手段はネットというシステムでしたが、元・町の書店員としては本の手触りを忘れず、著者の思いを伝え、読者の驚きや感動を演出する工夫をWEBでも展開しました。

その後、部長職を務めたIT企業も辞めて、父親支援のNPOを立ち上げたのが44歳の時。自らの育児体験や仕事と生活の両立方法を若い父親たちに伝授するセミナーを年間250回やっています。父親支援の本も10冊書きました。書店員時代はまさか自分が本を出すとは思っていなかったので今でも不思議です。

2010年に“イクメンブーム”が来て、男性の育児はある程度社会に定着しました。しかし子育ての現実は生易しいものではありません。今後、経済的繁栄があまり期待できない中で日本の育児は、欧米先進国のように「共働き・共育て」が子育て家庭のモデルになっていくはず。だから育児・家事に協力的な父親の存在は必須なのです。

でもパパは忙しい。「仕事が終わらず、子育ての時間が取れない」と多くの父親は言います。でも時間は作るもの。働き方を変え、家族と向き合える環境をつくってください。情報収集も同じ。僕も子育てで忙しい時、片手で赤ん坊を抱っこし、片手で文庫本を開いて読書してました。選ぶ本も、おのず「父親」が主人公の小説や、子どもの未来を考える人文系などにシフト。育児を楽しむには?そして父親としてどう生きるべきかについて、幾多の文庫本から智恵とビタミンをもらいました。

「パパになったら必読文庫 マイベスト3」を紹介します。

  1. 『さまよう刃』 東野圭吾(角川文庫)
  2. 『おとうさんといっしょ』 川端裕人(新潮文庫)
  3. 『自殺っていえなかった。』 自死遺児編集員会(サンマーク文庫)

 

さてこれからのニッポン。欧米のように父親が育児をするのは当たり前になると思います。では、少子化時代に生まれた子どもたちを自立させ、大人になって社会で活躍する人材にするにはどうしたらいいか?

私はその子どもの周りにどれだけ輝いている大人がいるかが重要だと思います。親に限らず学校の先生も子どもにとって重要な他者です。大学1年・高校1年・小学3年と3人の子どもがいて、小学校のPTA会長経験のある私が教員の皆さんに望むのは、 「教壇では輝いている大人として立ってほしい」ということです。そのためには、先生方もいつまでも職員室にいないで早く帰ってプライベートを充実させ、自らのライフワーク・バランスを重視した生活を送って欲しい。家族を大切に生活する、ボランティアをやる、地域活動をする、そして本をたくさん読む。仕事だけでなはない、そうした経験を父親は子どもたちの前で語ってほしいと思います。

最近、教員になりたいという若者が減っていると感じます。長時間労働の課題もありますがマインドが大事。先生たちが上司からの評価を気にしてサラリーマン化してしまうと、先生は誰でもいいということになってしまいます。子どもたちは、楽しい大人や、正しく生きている大人が好き。学校にもそのような笑顔の先生が増えてほしいと思うので、最後に先生たちにおすすめの絵本は『綱渡りの男』(小峰書店)。このノンフィクション絵本は大人になって忘れてしまった「遊び心」を思い出させてくれます。是非ご一読を。